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福岡地方裁判所 昭和46年(行ウ)30号 判決

福岡市博多区美野島二丁目一七-一六

原告

藤田物産有限会社

右代表者清算人

藤田大輔

同所同番地

原告

藤田物産株式会社

右代表者代表取締役

藤田大輔

同市博多区大字馬出千代松原一、一三〇

被告

博多税務署長

高倉定

右指定代理人

小林秀和

山下碩樹

田中秀昭

中村喜一郎

武藤亀夫

公文勝武

右当事者間の行政処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告藤田物産有限会社の請求をいずれも棄却する。

被告博多税務署長が原告藤田物産株式会社に対し、いずれも昭和四四年四月一八日付でなした

1  同原告の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の法人税についての、法第七五七号更正処分及び重加算税賦課決定処分(但し、裁決で取消されなかった部分)のうち、法人税額二二万二一〇〇円(課税所得額七五万三七九一円)、重加算税額六万六六〇〇円を超える部分、

2  同原告の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の法人税についての、法第七五八号更正処分及び重加算税賦課決定処分のうち、法人税額四六万八一〇〇円(課税所得額一六七万二七三七円)、重加算税額一四万〇四〇〇円を超える部分、をそれぞれ取消す。

同原告の右両事業年度についてのその余の請求を棄却する。

同原告の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の法人税についての、前同日付第七五九号更正処分及び重加算税賦課決定処分の取消を求める訴えを却下する。

訴訟費用のうち、原告藤田物産有限会社と被告との間に生じた分は同原告の負担、原告藤田物産株左会社と被告との間に生じた分は、これを二分し、その一を同原告の負担、その余を被告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

1  原告ら代表者は、「1、被告が原告藤田物産有限会社に対し、昭和四四年四月一八日付でなした、(1)、法第七五五号の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度の法人税額を五〇万二〇〇円とする更正処分、及び重加算税、一五万一五〇〇円の賦課決定処分と、(2)、法第七五六号の昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度の法人税額を二七万八〇〇〇円とする更正処分、及び重加算税八万三四〇〇円の賦課決定処分のうち、各審査請求による裁決で取消された部分を除く部分を取消す。

2  被告が原告藤田物産株式会社に対し、昭和四四年四月一八日付でなした、(1)、法第七五七号の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の法人税額を三四万三六〇〇円とする更正処分、及び重加算税一〇万一七〇〇円の賦課決定処分、並びに(2)、法第七五八号の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の法人税額を一二六万〇三〇〇円とする更正処分、及び重加算税三七万八〇〇〇円の賦課決定処分のうち、審査請求による裁決で取消された部分を除く部分、(3)、法第七五九号の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の法人税額を四九万四七〇〇円とする更正処分、及び重加算税一四万八二〇〇円の賦課決定処分をそれぞれ取消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告指定代理人らは、本案前として「原告らの本件訴えをいずれも却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、本案につき「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求めた。

第二当事者の主張

一  請求原因(原告ら)

1  原告藤田物産有限会社は、もと金融業その他を営んでいたものであるが、昭和四〇年五月六日解散し、現在清算中であり、原告藤田物産株式会社は、同年五月一八日設立され、原告藤田物産有限会社の資産、事業等一切を承継しているものである。

2  被告は、いずれも昭和四四年四月一八日付で、原告藤田物産有限会社に対し、昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度の法人税確定申告につき、請求の趣旨1、(1)の法第七五五号による更正処分及び重加算税賦課決定処分、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度の法人税確定申告につき、同1、(2)の法第七五六号による更正処分及び重加算税賦課決定処分をし、原告藤田物産株式会社に対し、昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の法人税確定申告につき、同2、(1)の法第七五七号による更正処分及び重加算税賦課決定処分、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の法人税確定申告につき、同(2)、2の法第七五八号による更正処分及び重加算税賦課決定処分、昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の法人税確定申告につき、同(2)、3の法第七五九号による更正処分及び重加算税賦課決定処分をした。

3  原告らは、右各更正処分及び重加算税賦課決定処分につき、被告に異議の申立をし、却下されたので、福岡国税局長に審査請求をしたところ、原告藤田物産有限会社の関係では昭和四六年六月三〇日付で、国税不服審所長の福法四六第六・七号と福法四六第八・九号による各裁決、原告藤田物産株式会社の関係では昭和四六年八月二日付で、同じく福法四六第一〇・一一号と福法四六第一二・一三号及び福法四六第一四・一五号による各裁決があったが、原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度の法人税額が四三万八二〇〇円、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度のそれが一八万三五〇〇円、原告藤田物産株式会社の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度のそれが八五万八五〇〇円というように、前記各原処分の一部分が取消されたのにとどまった。

4  しかし、原告らは、当時、焦げ付き債権の発生等で経営不振に陥り、従業員の給料や事務所の賃借料を支払うことすら困難な実状にあったものであって、前記各原処分中右裁決で取消された部分を除く部分も、右事実を無視し、未払金を収入金にしたり、不存在の未収金を推定したりして、不当な税額を決定しているものであり、すべて取消されるべきである。

二  本案前の主張(被告)

1  原告らは、昭和四六年一〇月二六日の本件訴え提起当時、訴状では、原告ら主張の各原処分を行った被告を相手方として、国税不服審判所長のした前記原告藤田物産有限会社に対する昭和四六年六月三〇日付福法四六第六・七号、及び福法四六第八・九号の各裁決、並びに原告藤田物産株式会社に対する同年八月二日付福法第一〇・一一号、及び福法第一二・一三号の各裁決の取消を求めていたところ、昭和四七年三月一四日付準備書面で、前記請求の趣旨記載のとおり、右各裁決の原処分、及び訴状で触れられていなかった原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の法人税額等に関する原処分の取消を求める旨、請求の趣旨を変更、拡張するに至った。

2  従って、右請求の趣旨の変更、拡張は、単なる訴状の訂正などと異なり、訴の交換的変更と追加とによる新訴の提起であり、右昭和四七年三月一四日付準備書面が裁判所に受理された同月一三日にその新訴提起があったことになる。

しかるに、原告らが右訴変更後取消を求めている各原処分に対する審査請求の裁決は、原告藤田物産有限会社関係の昭和四六年六月三〇日付福法四六第六・七号と福法四六第八・九号がいずれも同年七月二九日同原告に、また原告藤田物産株式会社関係の同年八月二日付福法四六第一〇・一一号と福法四六第一二・一三号及び福法四六第一四・一五号が同様に同年八月一四日同原告に、それぞれ送達されているので、右原告らの新訴は、その後三ケ月の出訴期間を徒過している不適法な訴えとして却下されるべきである。

3  なお、行政事件訴訟法二〇条により出訴期間の不遵守が救済されるのは、裁決庁を相手方とする抗告訴訟が適法に提起されている場合に限られるのであり、本件の場合、原告らは、当初、原処分庁である被告を相手方として、裁決の取消を求めていたのであるから、もともと相手方を誤った不適法な訴えが係属していたのに過ぎず、同条によって救済される事案に該当しない。

4  また、原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の法人税更正処分、及び重加算税賦課決定処分は、同原告の審査請求に基づく国税不服審判所長の昭和四六年八月二日付福法四六第一四・一五号の裁決で全部取消されており、同原告の右原処分の取消を求める訴えは、訴えの利益を欠き、この点でも不適法である。

三  本案前の主張に対する答弁(原告ら)

原告らは、本件で取消を求める各事業年度の被告の更正処分、及び重加算税賦課処分にそれぞれ審査請求を申立て、原告藤田物産有限会社は、その国税不服審判所長の前記昭和四六年六月三〇日付福法四六第六・七号及び福法四六第八・九号の各裁決書を同年七月二九日に、原告藤田物産株式会社は、同じく前記同年八月二日付福法四六第一〇・一一号と福法四六第一二・一三号及び福法四六第一四・一五号の各裁決書を同年八月一四日にそれぞれ送達された。

そして、右送達の日からいずれも行政事件訴訟法一四条四項による三ケ月の出訴期間内である、昭和四六年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているので、出訴期間の遵守に欠けるところはなく、この点に関する被告の本案前の主張は失当である。

四  請求原因に対する答弁並びに主張(被告)

1  請求原因1のうち、原告藤田物産株式会社が原告藤田物産有限会社の事業、資産等一切を承継した点は不知、その余は認める。

2  同2は認める。

3  同3のうち、原告らの異議申立につき、被告は、原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度に関する分につき却下し、原告らのその余の事業年度に関する分につき、それぞれ棄却処分としたものであり、その余はいずれも認める。

4  同4は争う。

5  本件各係争事業年度の法人税につき、原告らのした確定申告、被告の行った更正処分及び重加算税、原告らの審査請求と本訴(括弧書)での主張額、及び国税不服審所長のなした裁決の内容は、別紙一ないし四に記載のとおりであるところ、被告の本訴での主張は、基本的に右裁決額と同一(但し、別紙三、同四の各事業年度につき、括弧書のとおり僅かな金額の訂正主張がある。)である。

(1) 別紙一、原告藤田物産有限会社の昭和三八年年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息額二八〇万四二七二円は、別紙一、(注)記載のとおり、同原告代表取締役藤田大輔(昭和五一年二月一八日帰化以前の原国籍韓国、従前氏名李丙洙)が保管していた別口の金銭出納帳に基づき、昭和三九年一月以降八月まで八ケ月分の収入利息が一九七万九六七〇円と認められるところ、昭和四四年三月二三日の同原告方事務所の火災により、昭和三八年九月以降一二月までの期間の帳簿がないので、右両方の期間の貸付資金量を比較し、その貸付資金量に対する利息収入の割合から、右帳簿のない四ケ月分の収入利息八二万四六〇二円を推計し、合計二八〇万四二七二円を認定したものである。

(ⅱ) 同原告は、右事業年度の一般管理費、別表一、の二、(1)の報酬給料として、代表取締役藤田大輔及び従業員首藤イツ子への給料合計九六万円の主張をしているが、同原告の法人税確定申告書添付の損益計算書(乙一九六号証の三)、人件費内訳書(乙一九六号証の四)によると、常務取締役首藤イツ子への報酬が一九万四二〇〇円支給されているだけであり、右一般管理費としての報酬給料は右一九万四二〇〇円のみである。

(ⅲ) 同原告は、右別紙一、の二、(8)の地代家賃につき、首藤イツ子に月二万円、年額二四万円の家賃支払をした旨主張するが、同様に法人税確定申告書に添付の損益計算書(乙一九六号証の三)、地代家賃内訳書(乙一九六号証の四)によれば、年額一二万円の支払家賃額が計上されているだけであり、その余の取り決めや支払の事実等認められない。

(ⅳ) 同原告は、更に、右別紙一、の二、(10)の自動車使用料として、代表取締役藤田大輔に同人所有の乗用車の使用料として月一万五〇〇〇円、年間一八万円を支払っている旨主張しているが、そのような取り決めや支払の事実等認められない。

(2) 別紙二、原告藤田物産有限会社の昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息額一八一万八三七一円は、別紙二、(注)記載のとおり、同原告代表取締役藤田大輔が保管していた別口の金銭出納帳及び同原告事務所内で発見されたメモに基づき、昭和三九年九月、一〇月、一二月、及び昭和四〇年一月、二月の計五ケ月分の収入利息が一二二万〇七二〇円と認められるところ、前記火災のためその余の月に関する帳簿がないので、前同様両方の期間の貸付資金量の比較によって、帳簿のない昭和三九年一一月分収入利息を二六万五二七五円、昭和四〇年三月、四月分収入利息を併せて三三万二三七六円と推計し、右合計一八一万八三七一円を認定したものである。

(ⅱ) 同原告は、右事業年度の一般管理費、別紙二、の二、(1)の報酬給料として、代表取締役藤田大輔及び従業員首藤イツ子への給料合計六四万円の主張をしているが、同原告の法人税確定申告書添付の損益計算書(乙一九七号証の四)、人件費内訳書(乙一九七号証の四)によると、右藤田大輔に一六万円、常務取締役首藤イツ子に八万円、合計二四万の報酬が支払われているだけであり、右一般管理費としての報酬給料は右二四万円のみである。

(ⅲ) 同原告は、右別紙二、の二、(7)の地代家賃につき、首藤イツ子に月二万円、八ケ月間に一六万円の家賃支払をした旨主張するが、同様に法人税確定申告書に添付の損益計算書(乙一九七号証の三)、地代家賃内訳書(乙一九七号証の四)によれば、右期間内に支払われた家賃は七万円となっており、これを月額一万円の八ケ月分八万円の誤りと認め、右地代家賃額を八万円に認定した。

(ⅳ) 右別紙二、の二、(9)の自動車使用料に関する同原告の主張も、前と同一の理由によって認められない。

(3) 別紙三、原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息二七四万六八〇七円は、別紙三、(注)記載のとおり、貸付先四七件につき、原告代表取締役藤田大輔が保管していた貸付金台帳、借用証、約束手形等の証拠書類と、被告が行った照会、面接の反面調査の結果等による貸付年月日、利率、貸付金額、貸付期間に基づき各利息の額を算定し、その合計額を計上し、認定したものである。

(ⅱ) 同原告は、右事業年度の一般管理費、別紙三、の二、(1)の報酬給料として、代表取締役藤田大輔及び従業員首藤イツ子への給料合計九六万円の主張をしているが、同原告の法人税確定申告に添付の人件費内訳書(乙一九八号証の四)によると、右藤田大輔への報酬四八万円、従業給料首藤イツ子分一八万円、中村重尚分一〇万円、合計七六万円になっているところ、陳述録取書(乙二二〇号証)により右中村重尚分一〇万円が架空であると判明したので、結局、右一〇万円を差引く六六万円が支払われているだけであり、右一般管理費としての報酬給料は右六六万円のみである。

(ⅲ) 同原告は、右別紙三、の二、(8)の地代家賃につき、首藤イツ子に月二万円、年額二四万円の家賃支払をした旨主張するが、同様に法人税確定申告書に添付の損益計算書(乙一九八号証の三)、地代家賃内訳書(乙一九八号証の四)によれば、年額六万五〇〇〇円の支払家賃額が計上されているだけであり、その余の取り決めや支払の事実等認められない。

(ⅳ) 同原告は、更に右別紙三、の三の営業外費用として、同原告所有の乗用車一台(簿価三〇万円)を訴外石橋栄子に一〇万円で売却し、差額二〇万円の譲渡損がある旨主張するが、そのような売却の事実がなく、陳述録取書(乙二二〇号証)でも、売却の記録の誤りが述べられており、右営業外費用は認められない。

(4) 別紙四、原告藤田物産株式会社の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息五三二万二五八六円は、別紙四、(注)記載のとおり、貸付先五八件につき、前事業年度の該当個所で説明したのと同様の事実に基づいて、各利息の額を算定し、その合計額を計上、認定したものである。

(ⅱ) 同原告は、右事業年度の一般管理費、別紙四、の二、(8)の地代家賃につき、首藤イツ子に月二万円、年額二四万円の家賃支払をした旨主張するが、同原告の法人税確定申告書に添付の損益計算書(乙一九九号証の二)、地代家賃内訳書(同一九九号証の三)によれば、年額一〇万円の支払家賃額が計上されているだけであり、前事業年度分と同様、右一〇万円を超える地代家賃は認められない。

6  被告は、原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までと、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの各事業年度に一部推計課税を行った。

これは、例えば、右前者の事業年度についていうと、調査の際発見された金銭出納帳により、昭和三九年一月以降八月まで八ケ月分の収入利息額が一九七万九六七〇円と確定できるのに、その余の四ケ月分の収入を算出すべき資料がなく、他方、同原告の法人税確定申告額が右八ケ月分の収入利息二一万七三〇〇円、残り四ケ月分一六万八四〇〇円(乙一九六号の三参照)に過ぎず、到底信用できる状態になかったため、租税負担の公平の見地から、右資料のない四ケ月に推計による課税の必要があったものであり、右後者の事業年度の部分についても略々同様の理由があった。

そして、推計課税を行う場合、基礎資料が正確なものであることや、その基礎資料を適用する推計方法に合理性があること等の要件が必要であることは勿論であるが、右両事業年度の収入利息の推計については、現金出納帳に基づく争いのない収入利息額、払込資本金額と資産購入費、或いは出納帳簿に基づく借入金の数額等、その正確性、信愚性に問題のない基礎資料のみを使用している。

特に、右推計の方法については、本件のように年間収入のうち相当期間の金額を確定できる場合、その確定可能な期間の平均収入月額で他を推計することの合理性が、早くから容認されているか、被告としては、同原告が貸金業であることを考慮し、貸付資金量の多寡に応じた、より合理的な推計方法を行っており、その結果も、右単純推計に比べ納税者である同原告側に有利になっている。

7  原告らは、本件各事業年度の収入利息の一部に代表取締役藤田大輔個人の貸付金による分が含まれていることや、被告が収入利息認定の資料にした帳簿書類が原告ら会社のものでなく、右藤田大輔個人のものであること、原告らの借入金といわれるものも、藤田大輔が同人の個人的借入金を一部原告らに利用させていたものであり、原告らに借入金がないこと等を主張している。

しかし、藤田大輔は、原告らの代表取締役であったものである一方、個人としての金融業の届出や、その個人貸付という部分の収益についての所得税の申告をしておらず、帳簿類にも個人と会社との区別がなく、原告らの具体的主張も一貫していないこと等、内形的、外形的事実から考え、原告らが個人貸付という分も、原告らの代表取締役であった同人が原告の業務として行ったものと認めるのが相当である。

また、帳簿書類の点については、それが誰のものであるかということよりも、記載内容が原告らに関するものかが問題にされねばならないが金融業による収入の記載事項が原告らのものと認められること、右に述べたとおりであり、借入金の点についても、原告らのような同族会社で、会社に借入能力がない場合、取締役の個人的な借入金を会社に貸付けることが通常行われていること、及び前記のように藤田大輔の行為が原告の業務とみられること、原告らの決算書類に借入金及び利息負担の記載もあること等から判断して、いずれも原告らの営業資金目的のものと認められる。

8  原告らは、収入利息金の計算につき、現実に利息を受領したときに所得が発生する、という所謂現金主義によっているようであるが、税法では、収入利息金の場合も、契約上の履行期が到来すれば、現実には未収であっても、「収入すべき金額」として課税対象所得を構成する、という所謂発生主義ないし権利確定主義が採用されているものである。

(最判昭和四六年一一月九日民集二五巻八号一、一二〇頁、東高判昭和四八年八月三一日判例時報七一七号四〇頁)

また、原告らは、貸付金の支払が停滞したものにつき、借主と協議して、債権を免除、ないし利率を変更するなどし、当初の貸付日に遡及して公正証書を作成したうえ、それに基づく元利金の計算を行っている。

しかし、この点についても、税法では、会計慣行に従い、一旦発生した債権を後日免除、変更したとしても、当該免除、変更が確定した時点に債権の消滅を計上する扱いであり、確定時の属する事業年度以前に遡及してその変更をするものではない。(法人税法二二条四項、法人税基本通達二-二-一六)

従って、本件の場合も、原告らが過去に遡る利息の減免を行ったとしても、その減免は、前の事業年度の所得算定に何も変更をきたすものではなく、当該減免がなされた時点の事業年度で、過去の訂正分を含めた処理が行われるのである。

五  被告の主張に対する反論(原告ら)

(1)  別紙一、原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息、一般管理費、課税所得額は、別紙一の審査請求額欄に括弧書としているとおりであり、その裁決額との差額のうち、二、一般管理費(2)ないし(7)の裁決額五三万八一三九円、及び(9)の支払利息六二万三一〇〇円は争わないが、一、収入利息、二、一般管理費(1)の報酬給料、同(8)の地代家賃、同(10)の自動車使用料は争う。なお、右事業年度は欠損であり、課税所得が存しない。

(ⅱ) 右別紙一、一の同原告主張の収入利息額は、別紙一、(注)5にある原告の主張のとおり、昭和三八年九月以降一二月までが確定申告どおりの月別収入、昭和三九年一月以降八月までが裁決額どおりの月別収入であって、合計二一四万八二七〇円である。また、右二、(1)の報酬給料額は、代表取締役一名の給料年額六〇万円(月額五万円)、従業員一名の給料年額三六万円(月額三万円)、合計九六万円、同二、(8)の地代家賃は、電話付月額事務所賃料二万円の年額二四万円、同二、(9)の自動車使用料は、維持費原告側負担の約定による月額一万五〇〇〇円の年額一八万円である。

(2)  別紙二、原告藤田物産有限会社の昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息、一般管理費、課税所得額は、別紙二の審査請求額欄に括弧書しているとおりであり、その裁決額との差額のうち、二、一般管理費(2)ないし(6)の裁決額四九万六二二四円と同(8)の支払利息三二万九八〇〇円は争わないが、一、収入利息、二、一般管理費(1)の報酬給料、(7)の地代家賃同(9)の自動車使用料は争う。なお、右事業年度は欠損であり、課税所得が存しない。

(ⅱ) 右別紙二、一の同原告主張の収入利息額は、別表二、(注)5にある原告の主張のとおり、合計一〇三万二一七〇円である。

また、右二、(1)の報酬給料額は、代表取締役一名の給料昭和四〇年四月まで八ケ月分四〇万円(月額五万円)、従業員一名の給料右八ケ月分二四万円(月額三万円)、合計六四万円、同二、(7)の地代家賃は、前記月額二万円の八ケ月分一六万円、同二、(9)の自動車使用料も、前記月額一万五〇〇〇円の八ケ月分一二万円である。

(3)  別紙三、原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息、一般管理費、営業外費用は、別紙三の審査請求額欄に括弧書しているとおりで、その裁決額との差額のうち、別紙三、の二、一般管理費(2)ないし(7)の裁決額三〇万二七七三円と同(9)の支払利息四六万五九〇〇円は争わないが、一、収入利息額は、原告側の主張及び計算と大幅に相違しているので否認し、二、一般管理費(1)の報酬給料、(8)の地代家賃、三、の営業外費用もそれぞれ争う。なお、右事業年度は欠損であり、課税所得が存しない。

(ⅱ) 右一、の同原告の収入利息額は三三万二四九三円であり、右二、(1)の報酬給料額は、代表取締役一名の給料年額六〇万円(月額五万円)、従業員一名の給料年額三六万円(月額三万円)、合計九六万円、同二、(8)の地代家賃は、前記月額二万円の年額二四万円である。

また、右三、の営業外費用二〇万円は、従来使用料を支払っていた乗用車一台を代金三〇万円で同原告代表取締役から購入し、その後代金一〇万円で他に売却処分したので、その差額二〇万円が原告の損金経費となったものである。

(4)  別紙四、原告藤田物産株式会社の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度について

(ⅰ) 右事業年度の同原告の収入利息、一般管理費等は、別紙四の審査請求額欄に括弧書しているとおりであり、その裁決額との差額のうち、別紙四、の二、一般管理費(1)の報酬給料の裁決額七八万円と、同(2)ないし(7)の裁決額五八万五八五〇円、同(9)、(10)の支払利息七二万六七六〇円、事業税引当六万九九〇〇円の各裁決額、三の営業外収入、四の営業外費用各不認定の裁決は、いずれも争わないが、一の収入利息額は、原告側の主張及び計算と大幅に相違しているので否認し、二、一般管理費(8)の地代家賃額を争う。なお、右事業年度は欠損であり、課税所得が存しない。

(ⅱ) 右一、の同原告の収入利息額は七七万六〇六七円であり、右二、(8)の地代家賃は、前の事業年度で主張したのと同じ月額二万円の年額二四万円である。

(5)  被告は、本件各事業年度を通じ、原告らの代表取締役藤田大輔が保管していた金銭出納帳(乙二〇〇号ないし二一七号証)、その他の書類を重視して、原告らの収入利息を認定しているところ、右金銭出納帳その他の書類は、原告ら関係の記載もなくはないが、大部分が右藤田大輔の私的なノートであるのが実態である。

しかるに、被告は、右藤田大輔の私的なノートの記載事項のすべてを原告ら関係のものと断定しており、そのため原告らの収入利息の認定で重大な事実誤認に陥っている。

また、被告のいう貸付資金量にしても、資本金は欠損のため残存せず、借入金も、藤田大輔の個人的な借入金か、或いは同人がその借入金を一時原告らに利用させていただけのものであって、原告らの借入金としての性格を持たないものであった。

(6)  被告主張の所謂発生主義ないし権利確定主義による課税処分の適法性は争う。原告らとしては、所得税は所得することによってのみ課せられるものであり、所得のない処に所得税が賦課されることはない、と確信している。そして、このような考えは、原告らに限らず大多数の納税者の認識でもある筈である。

また、被告は、未収入の利息所得につき、遡及して減免をすることが、過去の事業年度の所得計算に変更を及ぼさない旨主張するが、原告らとしては、貸付金の焦げつき等が生じたとき、損金を最少限度にすることを基準に、借主に支払意欲を持たせるため、元金を減免したり、既収利息を元金に戻したりする。

原告らのこのような措置は、原告らが大手金融機関である銀行等と本質的に相違する点であり、右被告の主張は、原告ら庶民の金融機関を銀行等と同様に取扱うものであって、不当である。

原告らとしては、銀行等のように、過去の年度の損金を後の事業年度に計上して、税負担のバランスを取るようなことが困難であり、現実にも、原告らは、貸金業に失敗し、昭和四一年冬頃から経営困難に陥ったまま現在に至り、前年度の損金を後年度に計上すること等できず、未収利息も未収のまま、その後元利共消滅して仕舞っている。

第三証拠

原告ら代表者は、甲一号証の一、二、同二号証の一ないし三、同三号証ないし五号証、同六、七号証の各一、二、同八号証ないし二〇号証、同二一号証の一、二、同二二号証ないし二八号証、同二八号証の一、二、同二九号証ないし五四号証、同五五号証の一、二、同五六、五七号証、同五八号証の一ないし三、同五九号証、同六〇、六一号証の各一、二、同六二号証、同六三号証の一ないし三、同六四、六五号証の各一、二、同六六号証、同六七号証の一、二、同六八、六九号証、同七〇号証の一、二、同七一号証、同七二号証ないし七五証の各一、二、同七六号証、同七七、七八号証の各一、二、同七九号証ないし八一号証、同八二号証ないし八五号証の各一、二、同八六号証ないし八八号証、同八九号証ないし九一号証の各一、二、同九二号証の一ないし三、同九三、九四号証、同九五号証の一ないし八、同九六、九七号証、同九八号証の一、二、同九九号証、同一〇〇号証の一ないし三五、同一〇一号証ないし一一一号証、同一一二号証の一ないし五、同一一三号証ないし一二四号証、同一二五号証の一ないし一四、同一二六号証、同一二七号証の一ないし六、同一二八号証ないし一三四号証を提出し、

証人高倉徳雄(第一、二回)、同中島菊雄、同首藤イツ子の各証言及び原告ら代表者藤田大輔(昭和五一年二月一八日帰化前の原国籍韓国従前の氏名李丙洙)本人尋問の結果を援用し、

乙一号証の一ないし四、同二号証の一ないし五、同六七号証の一ないし四、同六九号証の一、同七一号証の一、同号証の三ないし五、同号証の八、同七二号証の三ないし五、同七三、七四号証の各一、同七六号証の一、同七八号証の一、同七九号証の二ないし四、同八一号証の一、同八二、八三号証、同八四号証の二、同八五号証の一、同八六号証の二、同八七、八八号証の各一ないし三、同八八号証の五、同八九号証の一、同号証の三ないし五、同九〇号証の一ないし三、同九一号証の一、同九二号証の一、三、六、同九三号証の一、二、同九四号証の一、同九五号証の一ないし三、同号証の五、同九八号証の一、同一〇一号証の一、同号証の五ないし七、同一〇三号証の一、三、同一〇四号証の一、同一一三号証の二、同一二七号証ないし一四八号証ないし一六五号証、同一七五号証、同九六、一九七号証の各一ないし四、同一九八号証の一ないし五、同一九九号証の一ないし四、同二〇〇号証ないし二一九号証、同二二一号証、同二二三、二二四号証、同二三八号証ないし二四〇号証、同二六三号証の成立は認める、

乙七一号証の六のうち、公正証書に基づく部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は不知、同一一五号証の成立は認める、但し同号証の頭記の「覚書」とある部分、及び「金銭出納簿〈A〉」とある付箋部分の成立は否認する、同一一六号証ないし一二一号証の成立は認める、但し同号証の頭記の「覚書」とある部分の成立は否認する、同一二二号証ないし一二六号証の成立は認める、但し右端に「貸」とある見出し部分の成立は否認する、

乙六八号証の一、同六九号証の二、同七一号証の二、同七二号証の一、同七六号証の二、同七七号証の一、同七九号証の一、同八〇号証の二、三、同八四号証の一、同八六号証の一、同九二号証の二、同九六、九七号証の各一、同九八号証の二、同九九号証、同一〇〇号証の一、同一〇一号証の二、同一〇三号証の二、同一〇六号証の一、同一〇八号証ないし一一一号証、同一一二号証の一、二、同一一三号証の一、同号証の三ないし六、同一一四号証、同一四七号証、同一九四号証の一、同一九五号証の一、二の成立は否認する、

その余の乙号各証の成立はいずれも不知、と述べ、

被告指定代理人らは、乙一号証の一ないし四、同二号証の一ないし五、同三号証の一ないし四、同四号証ないし六号証の各一、二、同七号証ないし九号証の各一ないし三、同一〇、一一号証の各一、二、同一二号証の一ないし三、同一三号証の一ないし七、同一四号証の一ないし五、同一五号証の一ないし七、同一六号証の一、二、同一七号証の一ないし四、同一八、一九号証の各一ないし三、同二〇号証の一ないし六、同二一号証の一、二、同二二号証の一ないし九、同二三号証、同二四号証の一ないし四、同二五号証の一ないし三、同二六号証ないし二八号証の各一、二、同二九号証の一ないし四、同三〇号証の一、二、同三一号証の一ないし三、同三二号証の一、二、同三三、三四号証の各一ないし三、同三五号証の一、二、同三六号証の一ないし五、同三七号証の一ないし四、同三八、三九号証の各一ないし三、同四〇、四一号証の各一、二、同四二号証の一ないし六、同四三号証の一ないし五、同四四号証の一ないし三、同四五号証の一ないし九、同四六号証の一ないし三、同四七号証の一ないし六、同四八号証の一ないし四、同四九号証の一ないし三、同五〇号証の一ないし四、同五一号証の一、二、同五二号証の一ないし四、同五三号証ないし五六号証の各一ないし三、同五七号証の一ないし九、同五八号証の一ないし三、同五九、六〇号証の各一ないし四、同六一号証の一ないし五、同六二号証の一ないし四、同六三号証の一ないし五、同六四号証の一ないし四、同六五号証の一ないし五、同六六号証の一ないし七、同六七号証の一ないし四、同六八号証の一ないし三、同六九号証の一ないし四、同七〇号証、同七一号証の一ないし八、同七二号証の一ないし五、同七三、七四号証の各一、二、同七五号証、同七六号証の一ないし四、同七七号証の一、二、同七八号証の一ないし六、同七九号証の一ないし四、同八〇号証の一ないし五、同八一号証の一、二、同八二、八三号証、同八四、八五号証の各一、二、同八六号証の一ないし三、同八七号証の一ないし四、同八八、八九号証の各一ないし五、同九〇号証の一ないし一四、同九一号証の一、二、同九二号証の一ないし八、同九三号証の一ないし四、同九四号証の一ないし三、同九五号証の一ないし五、同九六号証の一ないし四、同九七号証の一、二、同九八号証の一ないし四、同九九号証、同一〇〇号証の一、二、同一〇一号証の一ないし七、同一〇二号証の一ないし三、同一〇三号証の一ないし五、同一〇四号証の一ないし六、同一〇五、一〇六号証の各一、二、同一〇七号証ないし一一一号証、同一一二号証の一、二、同一一三号証の一ないし六、同一一四号証ないし一九三号証、同一九四、一九五号証の各一、二、同一九六、一九七号証の各一ないし四、同一九八号証の一ないし五、同一九九号証の一ないし四、同二〇〇号証ないし二二一号証、同二二二号証の一、二、同二二三号証ないし二三五号証、同二三六号証の一、二、同二三七号証の一ないし三、同二三八号証ないし二四〇号証、同二四一号証の一、二、同二四二号証ないし二六〇号証、同二六一、二六二号証の各一、二、同二六三号証を提出し、

証人福沢義雄、同金子義治の各証言を援用し、

甲五号証、同六、七号証の各一、二、同一四号証ないし一八号証、同二一号証の一、同二二号証ないし二四号証、同二八号証の一、二、同二九号証、同三二号証ないし三四号証、同三六号証、同六七号証の二、同七七号証の二、同九四号証、同九七号証、同九八号証の一、二、同九九号証、同一〇〇号証の一ないし五、同号証の七ないし三五、同一〇一、一〇二号証の成立は不知、同二一号証、三六号証のうち、各郵便官署作成部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は不知、同五九号証のうち、「不明…」という書込み部分の成立は不知、その余の部分の成立は認める、同六五号証の二のうち、「所在不明」という書込み部分の成立不知、その余の部分の成立は認める、同七〇号証の一のうち、「外に一一〇〇〇円…」という書込み部分の成立は不知、その余の部分の成立は認める、同七二号証の二のうち、「乙第87の4」及び「当書でない」という書込み部分の成立は不知、その余の部分の成立は認める、同七四号証の一のうち、「不知」という書込み部分の成立は不知、その余の部分の成立は認める、同七九号証のうち、中央の書込み部分の成立は不知、その余の部分の成立は認める、その余の甲号各証は、同二八号証を除き、いずれも成立を認める、と述べた。

理由

一  原告藤田物産有限会社がもと金融業等を営んでいた会社であって、昭和四〇年五月六日解散し、現在清算中であり、原告藤田物産株式会社が同年五月一八日設立され、同様に金融業等を営んでいた会社であること、

被告が、いずれも昭和四四年四月一八日付で、原告藤田物産有限会社に対し、昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度と、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度の各法人税確定申告につき、また、原告藤田物産株式会社に対し、昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度と、昭和四一年九月一日以降昭和四二八月三一日までの事業年度、及び昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の各法人税確定申告につき、それぞれ請求原因2記載の各更正処分並びに重加算税賦課決定処分をしたこと、

原告らが、右各更正処分及び重加算税賦課決定処分につき、被告への異議申立を経て、福岡国税局長に審査請求を申立て、国税不服審判所長が、原告藤田物産有限会社の審査請求に対し昭和四六年六月三〇日付、原告藤田物産株式会社の審査請求に対し同年八月二日付で、請求原因3記載の各裁決をし、原告藤田物産有限会社の前記二事業年度についての更正処分、重加算税賦課決定処分、原告藤田物産株式会社の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度について更正処分、重加算税決定処分につき、それぞれ原告ら主張の範囲の一部取消をし、原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の前記各処分についての審査請求を棄却したこと、

以上の事実は当事者間に争いがなく、成立に争いがない乙一号証の一ないし四、同二号証の一ないし五、弁論の全趣旨によれば、国税不服審判所長の原告藤田物産有限会社に対する右各裁決書謄本は昭和四六年七月二九日同原告に、また、原告藤田物産株式会社に対する右各裁決書謄本は同年八月一四日同原告にそれぞれ郵送されたこと、及び原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度の更正処分、重加算税賦課決定処分に関する右裁決が、原処分の全部を取消すものであること、をそれぞれ認めることができる。

二  被告は、原告らの本件訴えが行政事件訴訟法一四条四項所定の三ケ月の出訴期間経過後の不適法な訴えであること、原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度についての更正処分、重加算税賦課処分の取消を求める請求が訴えの利益を欠き不適法であることを主張するので、以下、まず、右被告の本案前の主張につき判断する。

記録によると、原告らは、前記のとおり昭和四六年七月二九日と八月一四日に、本件各係争事業年度についての各裁決書謄本の送達を受けたのち、三ケ月以内の同年一〇月二六日、原処分庁である被告を相手方として、本件訴えを提起しているところ、当初、訴状では、「一、被告が原告藤田物産有限会社に対し昭和四六年六月三〇日福法四六第六、七号及び同日付福法四六第八、九号の各事業年度分法人税更正処分及び重加算税賦課決定処分に対する審査請求についての裁決は夫々取消せ二、被告が原告藤田物産株式会社に対し昭和四六年八月二日福法四六第十、十一号及び同日付福法四六第十二、十三号による前項同様の裁決は取消せ。」との請求の趣旨を掲記していたこと、

そして、原告らは、裁決の取消を求める訴えが裁決をした行政庁を相手方にしなければならないこと(行政事件訴訟法一一条)を理由に、訴えの不適法却下を求める被告の答弁書が提出、陳述されたのち、昭和四七年三月一四日の本件第三回口頭弁論期日に陳述の同月一三日当裁判所受付の準備書面で、請求の趣旨を前記本件請求の趣旨どおりに変更し、それぞれ訴状掲記の四事業年度についての各更正処分、重加算税賦課決定処分取消請求の趣旨を明確にすると共に、新たに、原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度についての右原処分取消請求の趣旨を追加したこと、以上の経過が明らかである。

してみると、少くとも、右原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度についての更正処分、重加算税賦課決定処分の取消を求める請求部分は、原告らの前記昭和四七年三月一三日受付準備書面により追加的に提起されたものといわなければならず、この請求部分については、明らかに出訴期間経過後の訴え提起であるうえ、その取消を求める処分そのものが、裁決によって取消され、既に存在しないであるから、訴えの利益もなく、いずれにせよ、不適法として却下を免れない。

そして、原告らのその余の前記各事業年度の処分に関する各請求についても、訴状の請求の趣旨の文言上、いずれも裁決の取消を求める体裁になっており、そうすると、行政事件訴訟法一一条に基づきその相手方は裁決庁であって、原告らが出訴期間経過後、原処分である各更正処分、重加算税賦課決定処分の取消を求めるためには、一旦、同法一五条により相手方を裁決庁に改める申立をし、右許可を得たのち、改めて同法一九条二項ないし同法二〇条により、被告を相手方とする訴えを提起せねばならないように解せられないではない。

しかし、原告らは、もともと被告を相手方として本件訴えを提起しているものであるうえ、偶々、請求の趣旨に各裁決の表示をし、裁決の取消を求めるような体裁にしていたとはいえ、請求の原因では、所得のない処への課税額増額が不当であるが故に取消を求める旨述べ、所謂処分の取消と裁決の取消の違いの理解が不十分であるものの、裁決固有の取消原因を主張しているのではなく、むしろ原処分である各更正処分、重加算税賦課決定処分の取消を求める趣旨を明らかにしているように考えることもできる。

右のとおり、本件の場合、偶々、訴状の請求の趣旨が裁決の取消を求める体裁にみえるとはいえ、原告らが当初から被告を相手方に訴えを提起していることや、右請求の原因、及び原告らの意図している取消の目的を併せ考え、また、本件が本人訴訟であること、原告らが本件訴訟の初期の段階で、原処分の取消を求める旨請求の趣旨を訂正し、明確化していること等を総合すると、本件は、当初から原処分の取消を求める訴えとして提起されたものと認めて妨げないと解すべく、これを相手方を誤った裁決の取消訴訟、及び出訴期間経過後の原処分取消訴訟への変更として、厳密に区分した取扱をするは必ずしも相当でないと考えられる。

よって、この点に関する前記被告の本案前の主張は採用しないこととする。

三  そこで、次に、原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度と、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度、原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度と、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度についての前記各更正処分、重加算税賦課決定処分に関する本案につき判断するところ、右各事業年度毎の課税所得額、税額等の検討に先立ち、成立に争いがない甲三、四号証、同一九、二〇号証、同九六号証、同一〇三号証、同一三三号証(但し、後記措信しない部分を除く)、乙二二一号証、同二六三号証、証人首藤イツ子の証言により成立を認める甲一〇二号証(但し、後記措信しない部分を除く)、弁論の全趣旨により成立を認める乙二六一、二六二号証の各一、二、証人福沢義雄、同金子義治、同高倉徳雄(第一回)、同首藤イツ子(後記措信しない部分を除く)の各証言、原告ら代表者藤田大輔本人尋問の結果、弁論の全趣旨(前記当事者間に争いがない事実、記録編綴の右大輔の戸籍抄本等を含む)を総合すると、本件の全体に通ずるものとして、次のような事情を認めることができる。

すなわち、原告藤田物産有限会社は、昭和三七年七月頃福岡県知事に貸金業開始の届出をしたのち、昭和四〇年五月二四日「株式への組織変更のため」との理由で廃棄業届をし、次いで同月二五日原告藤田物産株式会社が、そのあとをうけて右貸金業開始の届出し、その後昭和四四年一月一九日休業届を提出し、現在に至っていること、

原告藤田物産有限会社の代表取締役で解散後の清算人、及び原告藤田物産株式会社の代表取締役は、いずれも藤田大輔であり、同人は昭和五一年二月一八日帰化する前の原国籍韓国、従前氏名李丙洙、日本名通称藤田恭輔であったが、個人として右貸金業の届出はしていないこと、

原告らは、登記簿上の本店所在地である肩書地(旧町名福岡市大字住吉六二八番地)の事務所以外に、原告藤田物産株式会社監査役首藤イツ子経営の福岡市高砂町一丁目七番四号所在の大泉旅館内に別棟の仮事務所を設けており、会社従業員としては、代表取締役藤田大輔のほか、帳簿類の保管や電話番等雑務担当の右首藤イツ子が一名いる程度であったこと、

原告らは、右四事業年度の法人税確定申告につき、別紙一ないし四の各確定申告額欄記載のとおり、原告藤田物産有限会社が昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度の課税所得マイナス八万四七五九円、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度の課税所得マイナス一〇万七七三三円、原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の課税所得マイナス一万一五一五円、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の課税所得マイナス九万八四〇四円として、いずれも納付税額零の申告を行ったこと、

被告の法人税第一課では、同業者との比較等から右申告に過少申告の疑いを持ち、原告らを特別調査の対象に選定したうえ、昭和四三年一一月一一日福沢上席国税調査官ら五名の職員が、原告らの前記大泉旅館内の仮事務所と肩書住所地の事務所とに手分けして調査に赴き、右肩書地事務所の方に行ったものも、「御用の方は大泉旅館の方におい出下さい。」という貼紙によって、後刻、右仮事務所の方に合流したこと、

右調査の際、仮事務所にいた原告ら代表者の藤田大輔と、大泉旅館の帳場にいた首藤イツ子は、当初、帳簿類は持ち合せていない、とか、別府の姪の処に持って行って、手許にない、などといっていたが、税務職員らは、右帳場の続きの部屋に貸付金台帳、金銭出納簿、メモ、借用証書等関係書類が整理、保管されているのを発見したこと、

右帳簿等関係書類が発見されたのち、首藤イツ子がやや興奮し、自棄気味の発言をしていたものの、藤田大輔は税務職員らに対し、「判った以上やむを得ないので、十二分に調査して下さい。」旨述べて、一応調査に協力する姿勢になり、書類が複雑のため税務署に持ち帰って調査したい、という税務職員の要請に対しても、「一向に差支えない。」旨応答したこと、

そこで、税務職員らは、相当大部の右書類につき、貸付台帳二冊、借用関係書類綴二冊、出納簿関係ノート五冊、書類バサミ六冊、その他手帳書類等二冊という、藤田物産株式会社藤田恭輔宛預り証を作成して、同人らから任意提出の形でその引渡をうけ、その後、被告側では、右書類のうち原告らの所得に関係するものを整理して、コピーをし、また、借受人らや銀行その他の反面調査も行いつつ、原告らの所得調査を続けたこと、

もっとも、原告ら代表者の藤田大輔は、前記調査の二、三日後から被告側の調査に非協力の姿勢に転じ、再三前記帳簿類等預け書類の返かんを要求するようになり、その後、昭和四四年三月二三日前記大泉旅館が火災で全焼したころ、その火災の際、右返還をうけた書類も焼失して仕舞ったこと、

被告は、藤田大輔の非協力的姿勢のため、最終的に同人から具体的な事情聴取を行うことができなかったが、前記のような調査結果に基づき、いずれも昭和四四年四月一八日付で、原告藤田物産有限会社の前記二事業年度の関係では、それぞれ一部収入利息の推計を行い、原告藤田物産株式会社の前記二事業年度の関係では、認定できた個々具体的な貸付についての利息計算を行ったうえ、別紙一ないし四の各更正額欄記載のとおり、それぞれ更正処分及び重加算税賦課決定処分を行ったこと、

以上の各事実を認めることができ、甲一三三号証、同一〇二号証、及び証人首藤イツ子の証言中、右認定に反する部分は、他の証拠及び右認定の経緯等に照らし、いずれも措信しない。

四  (原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度についての、本件更正処分及び重加算税賦課決定処分)

1  同原告の右事業年度の法人税についての被告及び同原告の主張は、別紙一記載のとおりであり(但し、被告主張額は裁決額欄に等しく、同原告主張額は審査請求額欄に括弧書されている。)、また、その確定申告、更正処分及び重加算税の各内容が別紙一記載のとおりであることは、同原告において明らかに争わない。

2  そして、法人税は、当該事業年度の益金の額から一般管理費等損金の額を控除して得られる課税所得額により計算されるところ、右益金の点につき、被告は、同原告の右事業年度の収入利息を二八〇万四二七二円と主張し、同原告は二一四万八二七〇円に過ぎない旨主張しているので、右同原告の認める部分は当事者間に争いがない。

そこで、右争いのない範囲を超える部分につき判断するに、成立に争いがない乙一九六号証の一ないし四、同二〇〇号証ないし二一〇号証、同二二三、二二四号証、証人金子義治の証言により成立を認める乙一九四号証の一、二、及び同証言、弁論の全趣旨を総合すると、次のように認めることができる。

すなわち、昭和四三年一一月一一日の前記特別調査の際、原告ら代表者藤田大輔から提出された書類中の金銭出納帳(乙二〇〇号証ないし二一〇号証)の記載に基づき、同原告の昭和三九年一月以降八月までの収入利息を左記被告主張欄のとおり認定できること、

〈省略〉

もっとも、被告は、現在、右昭和三九年五月分の収入利息四〇万四〇七〇円につき、金銭出納帳の記載が集計ミスであって、三〇万四〇七〇円が正しい、という同原告の主張を受入れ、裁決と同様三〇万四〇七〇円を主張しているところ、右八ケ月間の収入利息、合計一九七万九六七〇円は、同原告が福岡国税不服審判所宛提出し直した右事業年度の決算書にもそのように記載されており、本訴でも、それが収入利息であること自体は認めているものであること、

ところが、右事業年度の昭和三八年九月ないし一二月の収入利息については、認定資料が皆無であって、同原告は、右四ケ月間の収入利息額を、確定申告額という前記原告主張欄記載のように主張しており、右原告主張額四ケ月分計一六万八六〇〇円と前記八ケ月間の一九七万九六七〇円の合計二一四万八二七〇円が、前記同原告の認める争いがない部分の金額になっていること、

しかし、同原告の右事業年度の確定申告での収入利息額は三八万五七〇〇円(別紙一、及び乙一九六号証の三)であり、右資料のない四ケ月分が一六八六〇〇円とすると、残り八ケ月分が二一万七一〇〇円になるところ、右八ケ月間の実際の収入利息が一九七万九六九〇円であるから、その確定申告額二一万七一〇〇円は実収入の約九分の一程度に過きず、そのことが右資料のない四ケ月分の確定申告額の信憑性を失わせ、被告をして、右期間に法人税法一三一条所定の推計課税の導入を決定せしめたこと、

そして、同原告の場合、略々妥当な推計の方法としては、前記資料のある八ケ月間の平均収入により推計する方法(月割り方法)と、右資料のある八ケ月間の実収入と確定申告額との差額割合、つまり脱漏割合によって、残り四ケ月の確定申告額から実収入額を逆算推計する方法(脱漏割合方法)、及び営業の性質に着目し各月の貸付資金量を認定、算出したうえ、その資金量の多寡との割合により、残り四ケ月の収入を推計する方法(貸付資金量方法)のおよそ三とおりが考えられること、

右三とおりの推計方法のうち、最初の月割り方法は、最も簡明且つ合理的であると考えられるか、推計期間の前の資料を全く欠いている点で不安がないではなく、次の脱漏割合方法も、同原告については各月の変動差が大きく、実情にそわない虞れがあって、結局、最後の貸付資金量方法がより適正な推計方法であり、また、後記のとおり、その推計々算の結果も、納税者である同原告に一番有利な金額になっていること、

右貸付資金量方法の貸付資金は、什器備品購入費等にあてられた分を除く払込み資本金の残額と、他からの借入金(貸付以外の用途に供されたものがあればその分を除く。)の合計であることころ、同原告の場合、右払込み資本金の残額が確定申告書添付の決算書類により各月共一四三万二二〇〇円であり、毎月の借入金残額が前記金銭出納帳、福岡国税不服審判所宛提出し直された決算書、支払利息明細表(乙二二三、二二四号証、但し社長口五〇万円の借入れ分は不採用)等に基づき(成立に争いがない甲三〇三一号証、同三五号証、同三六号証ないし四二号証、弁論の全趣旨により成立を認める同二九号証、同三二号証ないし三四号証は昭和四二、三年代の借入金に関するものが殆んどである。)、略々、別紙一、(注)23記載(被告の主張のとおりであること、

従って、同原告の右事業年度の貸付資金量は、前記資料のある八ケ月間分が合計三〇〇七万八六〇〇円、資料のない推計期間の四ケ月分が一二五二万八八〇〇円であり、右資料のある八ケ月分の資金量に対する実額収入利息の割合によって、資料のない右四ケ月分の収入利息を按分推計すると、同じく別紙一、(注)4記載のとおり八二万四六〇二円(一ケ月平均約二〇万六一五〇円)であること、

以上の各事実を認めることができ、他に右認定を履すに足る証拠は存しない。

右事実によれば、同原告の右事業年度の収入利息額は、昭和三九年一月以降八月までが実額による一九七万九六七〇円、昭和三八年九月以降一二月までが推計による八二万四六〇二円、合計二八〇万四二七二円であり、右四ケ月間の推計部分についても、帳簿書類等資料が皆無である等推計の必要性が存在し、その推計の方法も、一事業年度中八ケ月間の実績を基に、貸付資本金の多寡に着目した比率による、より合理的なものということができ、右要件、方法共に適法と認められる。

3  次に、同原告の右事業年度の損金については、別紙一、の二、一般管理費中(1)、報酬給料、(5)、地代家賃、(10)、自動車使用料の点を除き、当事者間に争いがない。

そして、被告は、右報酬給料を従業員首藤イツ子への報酬年額一九万四二〇〇円、地代家賃を右首藤イツ子からの事務所賃料年額一二万円、右自動車使用料を零、と主張し、同原告は、代表取締役藤田大輔と右首藤イツ子への報酬が年額九六万円、右事務所賃料が年額二四万円、右藤田大輔所有の乗用車一台の使用料が年額一八万円である旨主張している。

しかし、前記乙一九六号証の一ないし四によると、同原告の同事業年度の確定申告書に添付の決算書類(貸借対照表、損益計算書、人件費内訳書)には、右被告主張の従業員報酬年額一九万四二〇〇円と、旧町名住吉六二八の事務所賃料年額一二万円の記載があるだけであって、自動車使用料に至っては全く触れられていないところ、右決算書類の記載部分は、本件更正処分等による紛争が発生する以前の損金に関するものであるから、課税処分の基礎資料として、十分採用に価するものということができる。

しかして、前記乙二二四号証及び首藤イツ子の証言、原告ら代表者藤田大輔本人尋問の結果によると、同原告が福岡国税不服審判所宛提出し直した決算書には、給料として、社長月給五万円、外月給三万円、賞与年二回各月給一ケ月、年額合計一一二万円(但し、賞与を除く分が九六万円)、事務所賃料月二万円、年額二四万円、自動車賃料月一万五〇〇〇円、年額一八万円、との記載があり、右首藤イツ子の証言、原告ら代表者本人尋問の結果も、これに副うものである。

しかし、右同原告が提出し直した決算書は、審査請求後、事件が国税不服審判所に係属してから作成されたものであるうえ、それに符合する右首藤イツ子の証言、原告ら代表者本人尋問の結果も、共に、裏付の書類資料が全くなく、右首藤イツ子の証言は、「事務所の賃貸借契約等作成していたが、前記昭和四四年三月の火災で焼失した。給料と賃料で月額五万円になるか、実際には五万円も貰っておらず、藤田大輔に預けた形にしていた。」、原告代表者本人尋問の結果も、「自動車賃貸借の関係書類は、総会に提出するためのものとしてあった。しかし、会社に支払能力がないため、一度も受取っておらず、会社としても、未払金扱いにしていた。」などという曖昧なものであって、いずれも、前記確定申告時の決算書類による認定を左右するに足りず、他に右認定を覆すべき証拠は存しない。

4  してみると、同原告の右事業年度の課税所得は、前記収入利息二八〇万四二七二円から一般管理費一四七万五四三九円(争いがない別紙一、の二、(2)ないし(7)の五三万八一三九円、同(9)の六二万三一〇〇円と、右報酬給料一九万四二〇〇円、地代家賃一二万円の合計)を差引き、一三二万八八三三円であって、法人税法一七条一項一号(但し当時)と国税通則法により、右課税所得に対する法人税額が四三万八二〇〇円(1,328,000〔千円未満切捨〕×0.33=438,240〔百円未満切捨〕)、国税通則法六八条一項による重加算税額が右本税の三〇パーセント、一三万一四〇〇円(438,000〔千円未満切捨〕×0.3=131,400)である。

五  (原告藤田物産有限会社の昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度についての、本件更正処分及び重加算税賦課決定処分)

1  同原告の右事業年度の法人税についての被告及び同原告の主張は、別紙二記載のとおりであり(但し、被告主張額は裁決額欄に等しく、同原告主張額は審査請求額欄に括弧書されている。)、また、その確定申告、更正処分及び重加算税の各内容が別紙二記載のとおりであることは、同原告において明らかに争わない。

2  右事業年度の益金につき、被告は、同原告の右事業年度の収入利息を一八一万八三七一円と主張し、同原告は一〇三万二一七〇円に過ぎない旨主張しているので、右同原告の認める部分は当事者間に争いがない。

そこで、右争いのない範囲を超える部分につき判断するに、前記二二四号証、成立に争いのない乙一九七号証の一ないし四、同二一〇号証ないし二一七号証、同二一九号証、証人金子義治の証言により成立を認める乙一九五号証の一、二、弁論の全趣旨により成立を認める乙二二二号証の一、二、及び証人金子義治の証言弁論の全趣旨を総合すると、次のように認めることができる。

すなわち、昭和四三年一一月一一日の前記特別調査の際、原告ら代表者から提出された書類中の金銭出納帳(乙二一〇号証ないし二一七号証)とメモ(乙二一九号証)の記載に基づき、同原告の昭和三九年九月、一〇月、一二月、及び昭和四〇年一月、二月、計五ケ月の収入利息を左記被告主張欄のとおり認定できること、

〈省略〉

(但し、右九月、一〇月、及び一月、二月分は、乙二一〇号証ないし二一九号証の金銭出納帳の該当月の収入金額中、摘要欄に利息を意味する朝鮮文字「 」が印されているものを集計した金額であるが、右出納帳の金額の記載は位どりを誤り、実際の額の一〇分の一に表示されており、また、右九月分は右被告主張の金額より多く、一〇月分、一月分も、被告の自認する受取小切手不渡り分と、その個所だけ正しい位どりをしているため誤った表示の体裁になる分を差引き、始めて右被告主張の金額になる。更に、右一二月分は、乙二一九号証メモの「入 350,300」の記載に基づくものであり、同原告代表者藤田大輔は、福岡国税不服審判所の事情聴取の際、それが右一二月分収入利息の記載であることを認めていた。)

右五ケ月の収入利息のうち、昭和三九年九月分と昭和四〇年二月分は、同原告が福岡国税不服審判所に提出し直した右事業年度の決算書にもそのように記載されており、右二月分の金額は本訴での同原告の主張と一致するものであるが、昭和三九年一〇月分と昭和四〇年一月分についての同原告の主張も、前記金銭出納帳の記載に基づくものであり、右一〇月分は被告主張の金額より多いものになっていること、

しかし、右事業年度の昭和三九年一一月と昭和四〇年三月、四月の収入利息については、認定資料が皆無であるところ、同原告の右事業年度の確定申告での収入利息額は、昭和三九年九月以降昭和四〇年四月までの八ケ月間が合計二七万四九五〇円であって、これに対し、前記資料により認定されるそのうち五ケ月間の実額収入利息の合計が一二二万〇七二〇円であるから、残りの右三ケ月分の確定申告額も到底信用できないものであり、右三ケ月の期間に推計課税の必要性があること、

そこで、前期同様、貸付資金量の比較により右推計を行うとすると、確定申告添付の決算書類による払込み資本金の残額が各月共一四二万七七〇〇円、毎月の借入金残額が前記金銭出納帳、福岡国税不服審判所宛提出し直された決算書、支払利息明細表(乙二二四号証、同二二二号証の二、但し社長口五〇万円の借入分は不採用)等に基づき(成立に争いがない甲九五号証の一ないし八、弁論の全趣旨により成立を認める同九四号証、同九八号証の一、二は昭和四四、五年の借入金に関するものが殆んどである。)、略々、別紙二、(注)23記載(被告の主張)のとおりであること、

従って、同原告の右事業年度の貸付資金量は、右資料のある五ケ月分が合計一六四六万三五〇〇円、そのうち昭和四〇年一、二月分が合計五三三万五四〇〇円、資料のない昭和三九年一一月分が三五七万七七〇〇円、同じく昭和四〇年三、四月分が合計五六五四〇〇円であること、

そして、右事業年度の場合、昭和四〇年一月以降収入利息が大幅に減少している点を考慮して、右一一月分につき資料のある五ケ月間の貸付資金量に対する実額収入利息の割合、右三、四月分につき資料のある一、二月分の貸付資金量に対する実額収入利息の割合により、それぞれの収入利息を按分推計し、別紙二、(注)4記載のとおり、右一一月分が二六万五二七五円、三、四月分が三三万二三七六円(一ケ月平均一六万六一八八円)であること、

以上の各事実を認めることができ、他に右認定を覆すに足る証拠は存しない。

右事実によれば、同原告の右事業年度の収入利息額は、昭和三九年九月、一〇月、一二月、昭和四〇年一月、二月が実額による一二二万〇七二〇円、昭和三九年一一月と昭和四〇年三月、四月の三ケ月間が推計による五九万七六五一円、合計一八一万八三七一円であり、右三ケ月間の推計部分についても、推計の必要性が存在し、推計の方法も合理的であって、推計の要件、方法共に適法と認められる。

3  次に、同原告の右事業年度の損金については、別紙二、の二、一般管理費(1)ないし(9)のうち、(1)、報酬給料、(7)、地代家賃、(9)、自動車使用料の点を除き、当事者に争いがなく、同(10)、の事業税引当七万九六八〇円は被告の自認するところである。

そして、右(1)、報酬給料、(7)、地代家賃、(9)、自動車使用料については、同原告の同事業年度の確定申告書に添付の決算書類(貸借対照表、損益計算書、人件費内訳書、前記乙一九七号証の一ないし四)に基づき、報酬給料が代表取締役李丙洙(藤田大輔)への総額一六万円、従業員首藤イツ子への同じく八万円、合計二四万円、地代家賃が首藤イツ子への総額七万円、但し、月数の違算があるという被告の自認に従い、これを総額八万円とし、自動車使用料の支出は認められない、と認定するのが相当である。

しかして、前記乙二二四号証中、同原告が福岡国税不服審判所宛提出し直した右事業年度の決算書、及び証人首藤イツ子の証言、原告ら代表者本人尋問の結果のうち、この点に関する同原告の主張に副う部分は、前に述べたのと同様の理由によって採用することができず、他に右認定を覆すに足る証拠は存しない。

4  そうすると、同原告の右事業年度の課税所得は、前記収入利息一八一万八三七一円から一般管理費一二二万五七〇四円(争いがない別紙二、の二、(2)ないし(6)の四九万六二二四円、(8)の三二万九八〇〇円と、前記(10)の七万九六八〇円、及び右報酬給料二四万円、地代家賃八万円の合計)を差引き、五九万二六六七円であって、法人税法一項一号(但し当時)と国税通則法により、右課税所得に対する法人税額が一八万三五〇〇円(592,000〔千円未満切捨〕×0.31=183,520〔百円未満切捨〕)国税通則法六八条一項による重加算税額が右本税の三〇パーセント、五万四九〇〇円

(183,000〔千円未満切捨〕×0.3=54,900)である。

六  (原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までと、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの各事業年度についての、本件各更正処分及び重加算税賦課決定処分)

1  同原告の右二事業年度の法人税についての被告及び同原告の主張は、別紙三、同四に記載のとおりであり(但し、被告主張額は裁決額欄に等しく〔いずれも収入利息についてのみ括弧書で僅かに金額を訂正している。〕、同原告主張額は審査請求額欄に括弧書されている。)、また、その確定申告、更正処分及び重加算税の各内容が別紙三、同四記載のとおりであることは、同原告において明らかに争わない。

2  右二事業年度の益金につき、被告は、同原告の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の収入利息を二七四万六八〇七円、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の収入利息を五三二万二五八六円と主張し、同原告は、前者が三三万二四九二円、後者が七七万六〇六七円に過ぎない旨主張しているので、右同原告の認める部分についてのみ当事者間に争いがない。

そこで、右争いのない範囲を超える部分につき判断するに、成立に争いがない乙六七号証の一ないし四、同六九号証の一、同七一号証の一、同号証の三ないし五、同七二号証の三ないし五、同七三、七四号証の各一、同七六号証の一、同七八号証の一、同七九号証の二、三、同八一号証の一、同八二、八三号証、同八四号証の二、同八五号証の一、同八七、八八号証の各一ないし三、同八九号証の一、三、及び五、同九〇号証の一ないし三、同九一号証の一、同九二号証の一、及び三、六、同九三号証の一、二、同九四号証の一、同九五号証の一ないし三、及び五、同九八号証の一、同一〇一号証の一、及び五ないし七、同一〇三号証の一、三、同一〇四号証の一、同一一三号証の二、同一二七号証ないし一四〇号証、同一四八号証ないし一六五号証、同一七五号証、同一九九号証の四、同二三九、二四〇号証、

甲八号証ないし一〇号証、同二七号証、同五五号証の二、同六〇号証の二、同六三号証の二、三、同七八号証の二、同八二号証の二、同一〇五号証、同一一一号証、

乙一一六号証ないし一二一号証の各頭記の「覚書」とある部分を除く部分、同一二一号証ないし一二六号証の各右端に「貸」とある見出し部分を除く部分、

公正証書に基づく計算部分の成立に争いがなく、その余の部分も弁論の全趣旨により成立を認める乙七一号証の六、

証人福沢義雄、同金子義治、同高倉徳雄の各証言及び弁論の全趣旨により成立を認める乙一三号証の六、同三三号証の二、同三七号証の四、同四八号証の四、同五七号証の八、同五八号証の三、同六一号証の五、同六三号証の五、同六八号証の二、三、同六九号証の三、四、同七〇号証、同七一号証の七、同七二号証ないし七四号証の各二、同七五号証、同七六号証の三、四、同七七号証の二、同七八号証の三、同八〇号証の一、四、同八一号証の二、同八五号証の二、同八六号証の二、三、同八七号証の四、同八九号証の二、同九〇号証の四ないし一四、同九一号証の二、同九二号証の四、五、及び七、八、同九三号証の三、同九四号証の二、三、同九五号証の四、同九六号証の二ないし四、同九七号証の二、同九八号証の三、四、同一〇〇号証の二、同一〇一号証の三、四、同一〇二号証の一ないし三、同一〇四号証の二、三、同一〇五号証の二、同一〇六号証の一、二、同一〇七号証ないし一一一号証、同一一四号証、同一六六号証ないし一七四号証、同一七六号証ないし一九三号証、同二二五号証ないし二三〇号証、同二三五号証、同二三六号証の一、二、同二三七号証の一ないし三、同二四一号証ないし二四九号証、同二五一、二五二号証、同二五四号証ないし二五八号証、

弁論の全趣旨により成立を認める甲一四、一五号証、同一八号証、同二四号証、

証人福沢義雄、同金子義治、同高倉徳雄の各証言、及び弁論の全趣旨を総合すると、次のように認めることができる。

すなわち、昭和四三年一一月一一日の前記特別調査の際、原告ら代表者藤田大輔から提出された書類中の貸付金台帳、借用証書、約束手形、領収書、委任状、手紙、公正証書、金銭出納帳、右藤田大輔のメモ、計算書、覚書等、及び被告側の行った各借主への質問、照会、取引銀行の調査など、反面調査の結果により、本件二事業年度とも被告主張のとおり、昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度につき別紙三、(注)の貸付先四七件、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度につき別紙四、(注)の貸付先五八件の各個別の貸付、利息の約定、既収、未収の別(但し、この点に一部被告の主張と異なる部分がある。)等を認定できること、

もっとも、右個別の貸付の有無、年月日、期間、弁済状況、及び利息の約定、既収、未収の別についての被告の認定は、大部分が同原告代表者藤田大輔の主張と一致しないものであって、右認定の事実を直接的に証明する貸金台帳その他の存在するものがある反面、そのような帳簿或いは書類がなく、前記藤田大輔のメモ、覚書や金銭出納帳、取引銀行の帳簿類から把握できる金銭の収支、その他の資料に基づき、間接的な認定になっているものも少くないが、その間接的な認定については、いずれも納税者である同原告の収入利息額を最少限確実な処でとらえるという観点から行われており、略々合理的であること、

そして、右両事業年度に亘る各個別の貸付の収入利息につき既収分と未収分を区別したうえ、その貸付先、貸付年月日、約定利率、貸付額、利息期間、利息制限法による制限範囲内の利息と遅延損害金の額、既収利息、右制限利息等に達しない未収利息額、右各認定の基本となっている書証の関係が、既収利息の認定その他合理性が十分でない個所を修正し、昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度につき別紙三、計算書、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度につき別紙四、計算書にそれぞれ記載のとおりであり、また、右各認定の詳細な経緯は、証人金子義治の証言(その要約されたものが昭和五七年一二月二七日付被告準備書面)のとおりであること、

以上の各事実を認めることができ、他に右認定を覆すに足る証拠は存しない。

同原告は、右認定されている各個別貸付の相当部分につき、後記のように代表者藤田大輔の個人的貸付であることを主張するほか、益金としての収入利息額の算定についても、現実に収受した金額のみを計上し、未収分を考慮しないとか、別紙三、計算書番号6の折居安興に対する貸金にみられる如く、次期事業年度に至って、貸付先との間に公正証書(弁論の全趣旨により成立を認める甲一二号証)、その他による当期事業年度への遡及的な取決めをしたうえ、その取決めによる収支計算をする、という処理による収入利息額を主張しているものの如くである。

しかし、法人税法でも所得の算定については公正妥当な会計処理の基準による旨定められており(二二条四項)、右会計処理上、期間内の収益を正確に算出するために、収益の発生が具体化し、社会通念上資産と認められる段階で益金扱いをすべく、現実に現金化ないし現金の収受まで要求されるものではないから、原告らの貸金業の場合も、貸金についての利息期間の経過により、約定利息ないし制限利息額の収益があったものとして、それを益金に計上すべきものといわなければならず、仮に、未収利息につき回収不能とか更改、放棄、免除等による例外的事情が発生したときは、その時点で改めて損金、その他の取扱いによる処理をするほかはない。

そして、このことは、原告ら主張の大手金融機関である銀行等であろうと、実質的に代表者の個人企業に過ぎない原告らの場合であろうと、区別なく妥当する解釈であって、未収利息を計上しない前記原告の主張は是認できず、また一旦発生した益金の減免、消滅、変更等も、それが行われた時点の属する事業年度でその処理をすべく、過去の事業年度の所得計算に遡及せず、なお、前記折居安興との変更契約も、契約自体収入利息額を減ずるものでもなければ、その変更契約が履行されたとも認められないものであり、右いずれにせよ、前記原告らの主張は採用することができない。

もっとも、被告の主張についてみても、被告は、前記各個別の貸付につき、月六、七分ないし八分という高利の約定による未収利息の計算をし、その未収利息額も収入利息として益金に含めた主張をしているところ、利息制限法違反の高利の約定がなされた場合、その高利が現実に収受されたとき、課税の対象となる益金を構成することは勿論であるが、その高利が未収の状態のままであるときは、強行法規違反の無効な契約に基づく、収入実現の蓋然性の必ずしも高くない性質のものとして、税法上も所謂「収入すべき金額」に当らないと解すべきである。(最判昭和四六年一一月九日、民集二五巻八号一、一二〇頁参照)

そこで、前記各個別の貸付につき、改めて利息制限法による制限範囲の利息、遅延損害金の額を算出し、各高利の収受利息、及び、未収利息のうち利息制限法の制限内の利息、遅延損害金等を算出すると、同原告の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の収入利息が別紙三、計算書記載のとおり、収受利息等二一二万七三五六円、未収利息等一二万〇一一〇円、合計二二四万七四六六円、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の収入利息が別紙四、計算書記載のとおり、収受利息等三一一万七三八三円、未収利息等八一万七八六四円、合計三九三万五二四七円である。

3  次に、同原告の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度の損金については、別紙三、の二、一般管理費中(1)、報酬給料と(8)、地代家賃、及び三、営業外費用の点を除き、当事者間に争いがない。

そして、右(1)、報酬給料と(8)、地代家賃は、同原告の右事業年度の確定申告書に添付の決算書類(貸借対照表、損益計算書、人件費内訳書)である成立に争いがない乙一九八号証の一ないし五に、及び、弁論の全趣旨により成立を認める乙二二〇号証(藤田恭輔〔李丙洙〕の陳述録取書)等に基づき、報酬給料につき、代表取締役藤田恭輔(藤田大輔)への総額四八万円、従業員への同じく一八万円(人件費内訳書の二八万円中、中村重尚分という一〇万円は右二二〇号証により支払の事実がないと認められる。)合計六六万円、地代家賃につき首藤イツ子への総額六万五〇〇〇円、と認定するのが相当である。

同原告は、右営業外費用として、従来使用していた乗用車一台を代表取締役藤田大輔から三〇万円で購入し、石橋栄子(同原告の取締役でもある。)に一〇万円で売却したので、二〇万円の損失があったと主張しているところ、右確定申告書添付の決算書類にも、一応その旨申告されていることが認められるほか、成立に争いがない甲二八号証、同四三号証ないし四八号証(損失内訳書や石橋栄子への自動車税納税告知書等)、及び証人首藤イツ子の証言、原告ら代表者本人尋問の結果も、右主張に副うものである。

しかし、右乗用車については、同原告に譲渡されていたという点で、既に的確な証拠資料が存しないうえ、原告ら代表者藤田大輔(当時藤田恭輔こと李丙洙)は、審査請求の段階で福岡国税不服審判所の事情聴取に応じ、前記乙二二〇号証の陳述録取書で「乗用車を四一年八月期に会社から石橋栄子さん(首藤さんの妹)に一〇万円で売却したように記録していますが、これは誤りです。ガソリン等は法人から支出していますので、法人の経費として認めて下さい。」と述べており、前記確定申告段階の決算書類中、乗用車売買差損の部分は、前記首藤イツ子の証言、原告ら代表者本人尋問の結果部分と共に、右説明によって措信できないところである。

また、右首藤イツ子、及び代表者本人尋問の結果中、前記報酬給料、地代家賃に関する部分も、前に述べたと同様の理由で採用できず、他に、以上の認定判断を覆するに足る証拠は存しない。

4  してみると、同原告の右事業年度の課税所得は、前記収入利息二二四万七四六六円から一般管理費一四九万三六七五円(争いがない別紙三、の二の(2)ないし(6)の三〇万二七七三円、(9)の四六万五九〇〇円、及び右報酬給料六六万円、地代家賃六万五〇〇〇円の合計)を差引き、七五万三七九一円であって、法人税法の一部を改正する昭和四一年法律第三二号附則三条の経過規定と国税通則法により、右課税所得に対する法人税額が二二万二一〇〇円(753,000〔千円未満切捨〕×0.295=222,135〔百円未満切捨〕)国税通則法六八条一項による重加算税額が右本税の三〇パーセント六万六六〇〇円(222,000〔千円未満切捨〕×0.3=66,000)

5  次に、同原告の昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度の損金については、別紙四、の二、一般管理費中(8)、の地代家賃の点を除き、三、四、の営業外収入、費用各不認定の分を含め、当事者間に争いがない。

そして、右地代家賃は、同原告の右事業年度の確定申告書に添付の決算書類(貸借対照表、損益計算書、人件費内訳書)である前記乙一九九号証の四、成立に争いがない同一九九号証の一ないし三に基づき、首藤イツ子への総額一〇万円と認めるのが相当である。

しかして、証人首藤イツ子の証言及び原告ら代表本人尋問の結果中右認定に反する部分は、前に述べたと同様の理由により採用することができず、他に右認定を覆するに足る証拠は存しない。

6  そうすると、同原告の右事業年度の課税所得は、前記収入利息三九三万五二四七円から一般管理費二二六万二五一〇円(争いがない別紙四、の二の(1)ないし(7)の五八万五八五〇円、(9)の七二万六七六〇円、(10)の六万九九〇〇円、及び右地代家賃一〇万円の合計)を差引き、一六七万二七三七円であって、法人税法六六条二項(但し当時)と国税通則法により、右課税所得に対する法人税額が四六万八一〇〇円(1,672,000〔千円未満切捨〕×0.28=468,160 〔百円未満切捨〕)、国税通則法六八条一項による重加算税額が一四万〇四〇〇円(468,000〔千円未満切捨〕×0.3=140,400)である。

七  原告らは、本件各事業年度を通じ、原告らの法人税所得につき、代表者である藤田大輔個人の金銭出納帳、メモ、覚書等、同人の個人的な書類によって所得の認定がなされたため、右同人の個人貸付による個人的収入利息と、法人である原告らの法人貸付による法人の収入利息との区別なく、すべて法人である原告らの所得であるかのように誤認された旨主張している。

しかし、前に説明したとおり、原告らは、法人の形態をとっているものの、実質的には、いずれも代表者である藤田大輔の個人企業と選ぶところがなく、従業員も右同人自身のほかは、大泉旅館の首藤イツ子一名だけというのであるところ、右藤田大輔が当時原告ら法人としての金融業以外に、個人として金融業の届出をし、営業をしていた事実は認められず、原告らが右同人の個人貸付であるという分の収入利息等につき、右個人として所得税の納税申告がなされているような事実もないのである。

してみれば、原告らが右同人の個人的貸付という分も、仮令貸付証書等に個人の氏名しか掲記しなかったにせよ、実質的に同人が原告ら法人の業務として行ったものと認めるのが相当であり、現に、原告藤田物産株式会社の前記各個別貸付につき、右個人貸付であると主張されている貸付先氏名の大部分が、同原告より福岡国税不服審判所宛提出し直された決算書(乙二五六号証)中に収入利息零等としてではあるが、申告されていて、同原告らにも右法人としての貸付の認識があったことを窺わせている。

また、原告藤田物産有限会社の前記二事業年度に関する、原告ら主張の金銭出納帳とメモ(乙二〇〇号証ないし二一七号証、同二一九号証)が代表者である藤田大輔の個人的な書類であったとしても、そこに記載されている前記各収入利息の数字が、法人である同原告の金融業に関する簿外収入を意味していることは、前記認定の経緯から明らかというほかなく、以上要するに、右原告らの主張は、いずれも採用することができない。

八  よって、原告藤田物産有限会社の昭和三八年九月一日以降昭和三九年八月三一日までの事業年度と、昭和三九年九月一日以降昭和四〇年五月七日までの事業年度についての本件各更正処分、重加算税賦課決定処分中、裁決で取消された部分以外は、すべて適法であり、同原告の本訴請求は、いずれも理由がないので、これを棄却し、

原告藤田物産株式会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日までの事業年度についての本件更正処分、重加算税賦課決定処分、並びに、昭和四一年九月一日以降昭和四二年八月三一日までの事業年度についての本件各更正処分、重加算税賦課決定処分中裁決で取消された部分以外のうち、前記認定した各税額を超える部分は、それぞれ違法であり、同原告の本訴請求中、当該部分の取消を求める範囲が理由があるので、各その限度を認容すべく、その余を棄却し、

原告藤田物産株式会社の昭和四二年九月一日以降昭和四三年八月三一日までの事業年度についての本件更正処分、重加算税賦課決定処分の取消を求める訴えは、不適法であるから、これを却下することとし、

訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中貞和 裁判官 池谷景 裁判官岸和田羊一は転任のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 田中貞和)

別紙一 原告藤田物産有限会社

(自昭和三八年九月一日至昭和三九年八月三一日事業年度)

〈省略〉

別紙一 (注)

1 本文の金銭出納帳(乙二〇〇号証ないし二一〇号証)に基づく、昭和三九年一月以降八月まで八ケ月分の収入利息は、左記のとおり、合計一九七万九、六七〇円である。

〈省略〉

2 貸付資金量の額は、各期に残存する、払込資本金の額から什器等資産購入費を控除した額、本件推計期間の同原告の場合、一四三万二、二〇〇円(乙一九六号証の二)と、借入金中他の用途に費消された分を除くものとの合計額であるが、同原告の各期の借入金は左記のとおりであり、且つこれが他の用途に使用された事蹟は存しない。

〈省略〉

3 従って、同原告の各月末の貸付資金量は左記のとおりとなる。

〈省略〉

4 そして、右帳簿のある期間の貸付資金量に対する利息収入の割合から、帳簿のない四ケ月分の収入利息を按分推計すると、左記のとおり八二万四、六〇二円である。

〈省略〉

5 なお、本事業年度の同原告の収入利息額についての原被告双方の主張は次のとおりである。

〈省略〉

別紙二 原告藤田物産有限会社

(自昭和三九年九月一日至昭和四〇年五月七日事業年度)

〈省略〉

別紙二 (注)

1 本文の金銭出納帳及びメモ(乙二一〇号証ないし二一七号証、乙二一九号証)に基づく、昭和三九年九月、一〇月、一二月、及び昭和四〇年一月、二月の計五ケ月分の収入利息は、左記のとおり合計一二二万〇、七二〇円である。

〈省略〉

2 同原告の当期に残存する、払込資本金の額から什器等資産購入費を控除した額は一四二万七、七〇〇(乙一九七号証の二)であり、また、各月の借入金は左記のとおりであって、且つこれが他の用途に使用された事蹟はない。

〈省略〉

3 従って、同原告の各月末の貸付資金量は左記のとおりとなる。

〈省略〉

4 そして、昭和四〇年一月以降収入利息が急激に減少している実状を考慮にいれ、帳簿のない月のうち昭和三九年一一月分につき、右帳簿のある全期間の貸付資金量に対する利息収入の割合、帳簿のない昭和四〇年三月、四月分につき、同年一月、二月の貸付資金量に対する利息収入の割合から、それぞれの収入利息を按分推計すると、左記のとおり前者が二六万五、二七五円、後者が二ケ月分併せて三三万二、三七六円である。

〈省略〉

〈省略〉

また、右昭和四十年三月、四月分につき、単純に右帳簿のある全期間の貸付資金量との対比による按分推計をすると、三月分が二〇万五、九四九円、四月分が二一万三、三一三円となって、裁決額を上廻る収入利息が計上される。

5 なお、本事業年度の同原告の収入利息額についての原被告双方の主張は次のとおりである。

〈省略〉

別紙三 原告藤田物産株式会社

(自昭和四〇年九月一日至昭和四一年八月三一日事業年度)

〈省略〉

別紙三 (注)

原告代表取締役藤田大輔が保管していた貸付金台帳、借用証、約束手形、公正証書、領収書、判決書、訴状及びメモ(乙六七号証の一ないし一〇五号証の二)、覚書(乙一一五号証ないし一四六号証)、昭和四二年一月以降三月までの金銭出納簿〈B〉の写(乙一四七号証ないし一六五号証)、更に、被告が右証拠書類上の各貸付先に対して行った照会、面接等の反面調査の結果(乙一〇六号証ないし一一四号証)、関係銀行の実地調査の結果(乙一六六号証ないし一九三号証)等に基づき、本事業年度の左記一覧表掲記の四七件の貸付とその貸付年月日、利率、貸付金額、貸付期間を認定した。

そして、右四七件の貸付につき、利息計算書(乙三号証の一ないし六六号証の六)を作成して、別表No.1ないしNo.10の各左側、本事業年度該当部分に記載のとおり、それぞれの利息額を算定、計上すると、その合計額が二七四万六、八〇七円である。

(但し、次の一覧表中の原告主張額は、原告が審査請求の段階で主張し、本件訴訟でも主張を変更する以前に維持していた金額である。)

〈省略〉

別紙四 原告藤田物産株式会社

(自昭和四一年九月一日至昭和四二年八月三一日事業年度)

〈省略〉

別紙四 (注)

前事業年度についての別紙三、(注)と同様の方法により、本事業年度の左記一覧表掲記の五八件とその貸付年月日、利率、貸付金額、貸付期間を認定し、別表No.1ないしNo.10の各右側、本事業年度該当部分に記載のとおり、それぞれの利息額を算定、計上すると、その合計額が五三二万二、五八六円である。

(但し、次の一覧表中の原告主張額は、原告が審査請求の段階で主張し、本件訴訟でも主張を変更する以前に維持していた金額である。)

〈省略〉

別表No.1 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.2 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.3 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.4 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.5 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.6 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.7 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.8 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.9 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.10 収入利息計算について

〈省略〉

別表No.11 収入利息計算について

〈省略〉

別紙三、計算書(昭和40年9月1日以降昭和41年8月31日までの事業年度)

〈省略〉

〈省略〉

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〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

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〈省略〉

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〈省略〉

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〈省略〉

別紙4 計算書(昭和41年9月1日以降 昭和42年8月31日までの事業年度)

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